婚約指輪の輝きを解き放った「ティファニーセッティング」の秘密
世界中の女性の憧れ、ティファニー(Tiffany & Co.)の婚約指輪。その輝きの秘密は、1886年にティファニーが生み出した「ティファニーセッティング」という革新的なダイヤモンドの留め方にあります。
このたった一つの発明が、婚約指輪のあり方を根本から変え、現代のエンゲージリングのスタンダードを築き上げたのです。このセッティングが、なぜ「世紀の発明」と呼ばれるのか、その構造と歴史を深掘りします。
世界を変えた構造:6本爪セッティングの仕組み
ティファニーセッティングの最大の特徴は、ダイヤモンドを支える「6本の細い爪」にあります。発明以前の指輪では、ダイヤモンドは金属の枠に「ベゼルセッティング」のように埋め込まれるのが一般的でした。この方法では、光が上部からしか当たらず、ダイヤモンドの持つ輝きを最大限に引き出すことができませんでした。
しかし、ティファニーセッティングは、ダイヤモンドを台座から高く持ち上げ、光を上下左右の全方向から取り込めるように設計されています。まるでダイヤモンドが宙に浮いているかのように見えるそのデザインは、光の反射と屈折を最大化し、ブリリアンス(白い輝き)、ファイア(虹色の煌めき)、シンチレーション(きらめき)といったダイヤモンド本来の美しさを解き放ちます。
メゾン・ストーリーズ・イメージ
デザインがもたらす「愛」の象徴
「6本爪」というデザインは、単に機能的なだけでなく、強い象徴性も持ち合わせています。6本の爪は、ダイヤモンド(永遠の愛)をしっかりと支え、「二人の愛を永遠に守り続ける」という意味合いが込められていると解釈されることもあります。
また、セッティングが最小限であるため、デザインの主役はあくまでダイヤモンドそのものです。これは、創業者チャールズ・ルイス・ティファニーが掲げた「真に美しいものはデザインよりも素材が語る」という信念を体現しています。このシンプルな美しさが、時代を超えて愛され続ける理由の一つです。
ティファニーセッティングの歴史的意義
1886年の発表当時、このセッティングは「革命的」と称されました。それまでの重厚で装飾的なデザインが主流だったジュエリーの世界に、「シンプルさと光」という新しい価値観をもたらしたからです。
このセッティング以降、婚約指輪は「ダイヤモンドの輝きを最優先する」という哲学が主流となりました。ティファニーセッティングの登場は、指輪のデザインだけでなく、ダイヤモンドのカット技術(ブリリアントカット)の進化にも影響を与え、現代のエンゲージリングの絶対的な「型」を作り上げました。
今日、世界中で見られる多くの立て爪タイプのソリティアリング(一粒石の指輪)は、すべてこのティファニーセッティングからインスピレーションを受けていると言っても過言ではありません。この発明こそが、ティファニーを単なる高級宝飾店から、「愛とロマンスの歴史」を形作ったブランドへと押し上げたのです。
ティファニー(Tiffany & Co.)公式サイトはこちら
(公式URL:https://www.tiffany.co.jp/ )
あわせて読みたい