IWC(アイ・ダブリュー・シー)はなぜ『大人の時計』?ブラッド・ピットも愛用する魅力
これは、一人の技術者のロマンと、奇跡の強運に守られた工房の、感動的な物語です。
夢の航海:アメリカから来た情熱的な技術者
物語の始まりは、1868年。遠いアメリカからスイスの静かな町、シャフハウゼンに降り立った一人の熱血漢がいました。時計技師のフロレンティン・アリオスト・ジョーンズです。
彼には、当時の常識を覆す、革新的なビジョンがありました。
「スイスの繊細で素晴らしい職人技と、アメリカで進んでいる効率的な工業技術を混ぜ合わせたら、きっと世界一の高品質な時計が作れるはずだ!」
彼は、水力を利用できるライン川が近くにあるシャフハウゼンを選び、International Watch Company(国際時計会社)を設立。夢の船出を飾りました。
しかし、現実は厳しく、事業の維持は難航。ジョーンズは志半ばでIWCを離れ、会社は倒産状態に陥ります。それでも、彼の夢は消えませんでした。地元の実業家、ラウシェンバッハ家らに引き継がれ、その土台はしっかりと守られたのです。
空と戦火を駆ける:運命を分けた不発弾
20世紀に入り、IWCは技術革新の炎を燃やし続けます。特にIWCの運命を決定づけたのは、「空」の時代の到来でした。
1930年代、IWCは飛行士のために、コックピットで絶対に狂ってはいけない、究極の時計作りを始めます。こうして1936年に発表されたのが、「Special Pilot’s Watch」。これは、今も続く人気シリーズ「Mark」の原点です。
奇跡のエピソード:工房を救った強運
しかし、世界は戦火に包まれます。IWCは、ドイツ空軍向けの巨大な「B-ウーレン(55mmの大型軍用時計)」も製造するメーカーの一つでした。厳しい時代、IWCは究極の視認性と耐久性を追求しました。
そして、運命の1944年、シャフハウゼンが空爆に見舞われたとき、信じられない出来事が起こります。IWCの工場に爆弾が直撃したものの、なんと不発!
もし爆発していたら、IWCの歴史はそこで途絶えていたでしょう。この奇跡的な強運のエピソードは、IWCの時計に「不屈の精神」という特別な物語を刻みつけました。
技術者の熱い想い:名作ムーブメントと複雑機構への挑戦
戦後、IWCは経済復興の波に乗り、時計の心臓部であるムーブメントの性能向上に全力を注ぎます。
1950年代に生まれた手巻きムーブメント「Calibre 89」は、その精度と耐久性から「傑作」と長く愛されました。さらに、磁気に強い時計、絶対に狂わない永久カレンダーといった複雑な仕組みにも果敢に挑戦し、IWCは「本格派の高級機械式時計メーカー」としての地位を確固たるものにしました。
この「技術への徹底的なこだわり」こそ、IWCが自らを「技術者の時計(Engineer of Watchmaking™)」と呼ぶ所以です。
密かな憧れ:セレブも愛用する「機能美」
派手さよりも実直さ。だからこそ、IWCは「わかる人にはわかる」玄人好みのブランドとして愛されています。
あの人も選んだIWCの魅力
IWCは映画界やスポーツ界のトップスターたちとも深い絆で結ばれています。
ハリウッドでは、ブラッドリー・クーパーやブラッド・ピットといった素敵な俳優さんがIWCを愛用。レッドカーペットで、彼らの洗練されたスタイルを引き立てています。
また、モータースポーツとのコラボレーションも盛んで、「速さ」と「技術」を愛するブランドの姿勢が見て取れます。IWCを選ぶ人は、確かな品質と深みのある物語を大切にする人たちなんですね。
また、日本でも、その「上品なのに目立つ」機能美に惹かれる著名人が多くいます。
- 小栗 旬さん
- 木村 拓哉さん 他
など、第一線で活躍する俳優さんたちが、IWCの時計を腕元に選んでいます。彼らが選ぶのは、流行に左右されない「クラシックさ」と、無駄を削ぎ落とした「機能美」が絶妙に融合したデザインです。
なぜ玄人はIWCを選ぶのか?
IWCのデザインは、比較的大きめサイズで、視認性の高いダイヤル設計を採ることが多く、視覚的なインパクトがあります。また、「他の超高級ブランドのような、ギラギラした話題性にはあまり巻き込まれないが、堅実で価値のある時計」として、真の時計ファンに密かに憧れられているのです。
オーナーの本音:愛ゆえの「辛口レビュー」も
どんな名作にも、愛ゆえの厳しい声はつきものです。IWCのオーナーたちからは、次のような正直な声も聞かれます。
- サービス価格の高さ: 機械式時計に不可欠な定期的なオーバーホール(分解整備)の正規サービス価格が高めで、部品交換や仕上げの工賃も高いという指摘。
- 「超一流」との競争力: ロレックスやパテック・フィリップといった超一流ブランドと比べると、大衆的なステータス性の面で一歩下がると見られることがある。
しかし、これらの苦言は、IWCが「本格派の技術力」を追求し、その高品質な部品やサービスを維持するために必要なコストである、とも言えます。現在、巨大グループリシュモンの傘下に入り、安定した基盤のもと、IWCのサービス体制は日々向上しています。
未来へ航海:創業者の夢を継ぐ「マニュファクトゥール」
1970年代の「クォーツショック」という大波を乗り越え、IWCは2000年にリシュモングループ傘下に入り、安定と成長の道を歩み始めます。
そして近年、IWCは創業者の夢を現代に引き継ぐ、最新鋭の「マニュファクトゥールセンター」を建設しました。これは、ジョーンズが目指した「工業技術と職人技の融合」を、最先端の生産効率で実現する場所です。
ライン川のほとりで、一人のアメリカ人が抱いた壮大な夢は、150年以上の時を超え、今もなお、技術と情熱の光を放ち続けています。
IWCの時計は、単なる時間を示す道具ではなく、歴史の試練を乗り越え、あなたと共に未来を切り開く、不屈の相棒となるでしょう。
IWC(アイ・ダブリュー・シー)公式サイトはこちら
(公式URL: https://www.iwc.com/jp-ja )